慣れ親しんだ場所でやすらかに|看取りケアと15分の誕生会

高齢者のくらしを支援する私たちにとって、避けては通れないことのひとつに、人生の最期、「死」というものがあります。

医療の発達により、2000年頃には、亡くなる方の約8割が病院などの医療機関で最期を迎えられたと言われていますが、近年では、自宅や高齢者施設などの慣れた場所で、家族や馴染みのあるケアスタッフなどに見守られながら最期を迎えたい、と望まれる方が増えています。ガイドラインやシステムも整備され、どこでどのように最期を迎えたいか、個人の意思が尊重され、社会全体としても目が向けられるようになってきました。

先日行った「第7回実践発表会」では、特別養護老人ホーム満寿園から、「看取りケア」についての発表がありました。

看取りケアとは、医師の診断のもとに、無理な延命治療は行わず、身体とこころの苦痛を緩和・軽減させながら、人生の最期まで尊厳を保ち、安らかな気持ちで過ごしていただけるよう支援することです。医師からの説明を受け、ご本人や家族が希望された場合、あしぎぬ福祉会で最期を迎えられるご利用者さんもおられます。

 


 

特別養護老人ホーム満寿園で最期の時間を過ごされたあるご利用者さんは、歌を歌うことや人と話すことが大好きで、笑顔が本当に素敵な方でした。

看取り対応となってからも、無理のない範囲で今まで通りの生活や習慣を続けていただけるよう、また、人と一緒に過ごされるのが好きな気持ちを大切に、看取りにおける介護計画を立てました。
体調のよい日は、他のご利用者さんと一緒にリビングで過ごされ、好きな歌をうたったり、洗濯物をたたまれる姿を見守り、たくさんの会話を心掛けました。会話の内容や体調の変化は細かく記録に残し、ご家族が面会に来られた際にできるだけ詳しくお伝えしました。ご家族の戸惑いや悲しみに寄り添い、疲労や精神的な負担を減らすための支援も大切にしています。

徐々に体力が低下していく中、ご利用者さんとご家族のために何かできることがないかと考えたとき、とは言っても、その頃はコロナウイルス感染症がまだ流行っている中であったため、とても悩みました。悩んで悩んで、施設長や各専門職、法人内の他の事業所も集まる会議でも検討し、「15分の誕生会」を行うことにしました。

90歳を超えられたご利用者さんの、長い人生の中のほんのわずか、たった15分ではありましたが、ご家族が持ってきてくださった思い入れのある料理をとても嬉しそうに食べられ、和やかな時間を過ごしていただくことができました。

そしてその一週間後、体調が急変し、ご家族に見守られる中、特別養護老人ホームの居室で息を引き取られました。

 


 

ご家族と一緒の時間を大切にできたことや、寝たきりではなく、体調に応じて好きな場所で過ごしていただくことができてよかったと思う反面、「こんなことができたらもっと喜んでもらえただろうか…」といつも考えます。そんな時、普段からご利用者を知り、好きなことやしたいことなどの想いを知る、ということがいかに大切か気付かされます。

ご利用者とご家族に、満寿園を選んでよかったと思っていただけるよう、また、看取りケアが必要になった時には、残された時間を最期までその方らしく、安らかな気持ちで過ごしていただけるよう、一日一日を、ひとつの会話を、一つのケアを…大切にしたいと思います。

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